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2006年9月 3日 (日)

レトロなレンズを求めて

●トイレンズで写真を遊ぶ 1

私がトイカメラの存在を知ったのは操上和美さんの写真集「陽と骨」(PARCO出版、1984年)によってだ。この写真集は函入りで、ハードカバー、クロス装のカラー写真集とソフトカバー、平綴じのモノクロ写真集の二冊で構成されている。

カラーの方は、ちょっとアンダー目で濁ったような色合いがひじょうに美しい写真集。一方のモノクロ写真集の方の撮影がすべてトイカメラによるものだ。ピントが甘く、粒子が荒れ、現像ムラやネガ傷があるような写真なのだが、静かで暴力的でレトロで不思議なイメージを醸し出している。

これがカッコ良くて、真似してみたいと思ったのだが、トイカメラというのが何だか分からない。まあ直訳すれば玩具写真機だから、子供向けではあるが、一応写真を撮る機能は備えているもの、というのが当時のイメージだ。本人のインタビューによれば、胸ポケットに入るような小さなもの、とのことだったので、今ブームになっている旧共産主義国製カメラとはまた違った、本当にオモチャみたいなものだったのではと考えている。

ただ残念ながら、本当に撮影ができるオモチャカメラは探しだすことは出来なかった。その代わりと言ってはなんだが、今度は「ベス単」というものの存在を知った。これは「ベストポケットコダック」(VPK)という1912年生まれのカメラのレンズのことだ。

ベストポケットというのはポケットに入るような小さなカメラという意味。高さ12センチ、幅6.5センチ、たたむと2.5センチの厚さになり、重さが260gというのは、現代でも十分にポケットサイズと言えるだろう。

そしてこのカメラのレンズが単玉(1群2枚)だったことから、「ベス単」という愛称がついた。ベス単の特徴は、レンズ前に付いているフードを外してしまうことにより、独特のソフト効果がでてくるところにある。フード外しにより球面収差が出て軟焦点になってしまうのだ。

通常はこういった球面収差をいかに抑えるか、といったことが重要になるわけだが、このソフトフォーカス効果が味として楽しまれたというわけだ。小さく、安く、庶民に愛されたベストセラー機種だったが、一方でフード外しのテクニックは写真愛好家の間でも流行し、そのソフトな描写から「朦朧写真」などと呼ばれたようだ。

VPKはベストフィルムというサイズのフィルムを利用する。ブローニー判より少し小さく現在では入手困難だ。シャッターもバルブと1/25、1/50秒しかないので、レンズだけ外して、6×6や35mmの一眼レフに付けて使うのが一般的だ。

ただ、私自身は興味はあったものの、わざわざ骨董品のようなカメラを探し出してきて、レンズを取り外して一眼レフにくっつけるなどということまでは、やらなかった。そんな時、目に留まったのがカメラ雑誌に掲載されていたキヨハラ光学のVK70Rというレンズだ。

このレンズはベス単のフード外し状態を一眼レフカメラで楽しむために開発されたものだ。各社のマウントが用意されていたので、当時コンタックスを使っていた私はヤシカマウントの製品を早速注文した。

で、どんな描写になったのかは以下のページの写真をご覧いただきたい。わずかな滲みやボケ具合にレトロっぽさが出ているのが、お分かりいただけるだろうか?

http://www.k5.dion.ne.jp/~color/gallery/galindex.html

絞りを開けるとソフトフォーカス効果がかかり、幻想的というか甘ったるい写真になる。これが本来の「ベス単」の使い方であり、「ベス単」というキーワードで検索すれば色んな写真を見ることができる。ただ私はあんまりソフト過ぎる描写というのは好きではないので、ちょっと絞り気味に撮影を行った。しかし、思いっきり絞ってしまうと今度はソフト効果のかからない普通の写真になってしまうので、自分の好みの絞り値を見つけ出すというのが、このレンズを使う場合のポイントだ。

最近ではレンズベビーというトイレンズが人気になっている。一眼レフカメラで利用できるチューブ状の蛇腹レンズで、蛇腹の伸縮によりピント合わせを行うところがユニークだ。最大の特徴はレンズ自体を曲げてしまうことができること。要するにアオリ操作ができるわけだが、この操作によって画面の中にピントが合っている所と合っていない所ができ、その描写が面白いのだ。

http://lensbaby.jp/

これはPhotoshopでは出せない味わいなので、その愛嬌のあるルックスに惹かれて、すぐに買ってしまおうとしたのだが、色んな人が撮っているサンプル写真を見ているうちに、ちょっと気が萎えてきた。面白いのは面白いんだけど、ちょっとレンズが主張しすぎという感じなのだ。ちょこっとレトロ、というぐらいならいいんだけど、いかにもという感じはちょっといただけない。

ただ、またチープなレンズで遊んでみたいという欲求が生まれてしまった。そして思いついたのは、「自分で作っちまえばいいのか?」ということだ。オモチャカメラというのは見つけることはできなかったけど、チープなレンズというのは世の中に色々ある。それに蛇腹を付けてみたらどうだろう?

デジタルカメラを使えば工作しながら、すぐに撮影した写真のチェックもできるし、紙やプラスチックを使えば工作も簡単だ。そう思い至ると、私は自転車に飛び乗り、100円ショップへと、カッ飛んで行ったのだった……。

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コメント

 はじめまして、うさぎとかめです。
キッチュレンズ工房を発見しトイレンズ使用してみようと本を購入しためしてみましたがレンズが装着されてませんとコメントがでます使用カメラ(ミノルタαデジタル)です。
 上原さんは、ニコンをお使いですね。
使い方ありますか?

投稿: うさぎとかめ | 2007年9月10日 (月) 08時36分

うさぎとかめさま

ニコンの場合は古いレンズを着けることが想定されているので、こういったエラーメッセージはでません。
設定でこのメッセージが出ないようにすることができればいいですが、可能かどうかはメーカーの方に聞いてみていただけますでしょうか。

投稿: ZEN | 2007年9月10日 (月) 09時29分

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