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2006年9月 3日 (日)

さよならピンホール

■トイレンズで写真を遊ぶ 7

梅雨のおかげで、なかなかピンホール日和がなかったのだが、ちょっとした晴れ間に近所の公園で、ピンホールカメラというかピンホールを付けたデジカメのテストをしてきた。

撮影は三脚をつけて行った。最初は感度を上げてしまってスナップのようにして撮れないものかと思っていたが、残念ながら光量が足りなかった。多少ブレても構わないからノーファインダーでバシャバシャ撮ってみようと思っていたのだが、スローシャッターでバッッッシャンという感じなので、手持ちだとちょっと訳の分からない写真になりそうだ。

ノーファインダーでバシャバシャというのは昔ハーフカメラでやったことがある。ハーフカメラというのは普通の35mmのフィルムの一コマに、二コマ分撮影ができるカメラだ。36枚撮りのフィルムであれば72枚撮影できる。当然解像度は落ちるが、大伸ばしすると逆に粒子が目立って面白い感じになる。

そのハーフカメラのユニークだった点はフィルムの巻き上げがゼンマイ式だったということ。街中を撮り歩きながら、たまにジーコ、ジーコとゼンマイを巻くという行為が楽しかった。シャッターを切ると自動的にフィルムが巻き上がり、72枚も撮影できてしまうので、いい気になって撮影した記憶がある。

でもデジタルだったら、フィルムを巻く必要もなく、フィルム代もかからないんだから、あのハーフカメラのような気軽さはあるな……。いい気になって携帯でバシャバシャ撮っている人は、いくらでもいるわけだし。

それに対して三脚での撮影というのは、機動力がない。ただピンホールカメラでの撮影時には、撮影画像のフレーミングやヒストグラムでの露出の確認ができるので、やはり三脚を使ってしまったほうが楽だ。

三脚をかついで公園をぶらぶらしていたら、ごくごく小さな川を発見。そう言えばピンホールの人達ってよく川とか撮ってるよな、と思いつつ三脚を据えてみる。ちょろちょろ流れる川を長時間露光すれば、川の流れがきれいにブレた写真が撮れるはず。ピンホール写真の技法の一つには、こういった被写体ブレを生かしたものがある。背景は三脚で固定し、人間や車や川の流れなどの動きをブレで表現する方法だ。

私は感度を下げてバルブ撮影にしてみた。バルブというのは、シャッターボタンを押している間だけ、シャッターを開けておく撮影法だ。携帯電話で秒数をカウントしながら、ジッとシャッターを押さえていたら、蚊に刺されてしまった。慌てて追い払おうとしたら、携帯を川に落としてしまった。

ピンホールは向いてないのかな……。くじけそうになる……。

場所を変えてうろうろしていたら、公園に幼稚園児の集団が現れた。手頃な「動くもの」だ。私は怪しまれないように三脚を据え、シャッターを切り始めた。園児達は前の子供の肩に手をかけ、連なって歩き始めた。「おっ! グレイシー・トレインだ」。傍らを通り過ぎる子供達は「ガッターン、ゴットーン」と口走っている。

グレイシー・トレインというより、これはいわゆる電車ごっこというものだな。グレイシー一族も亀田一族も、何故電車ごっこをしながら入場するのだろう? 液晶で確認しながら、シャッターを切る。シャッタースピードは0.4秒。子供達はほどよくブレていい感じになった。

◇園児トレイン

●君はパンフォーカス

まあ、子供達がかわいく撮れたのはいいんだけど、はたしてこれが私の目指してきたものだったのだろうか? というか元々高邁な志があったのかは定かではないが、ちょっと違う気がする。

思い出した。この連載ではオモチャのレンズを使ったり、レンズをシフトさせてみたりして、なんか面白い写真が撮れないものかと実験してみるという企画だった。しかし、ピンホールカメラというのは元々パンフォーカスで、近い所から遠くまでピントが合ってしまうから、ボケ味もへったくれもないのだ。

でもなんかレトロな感じをかもしだしているというのは、別のファクターが大きいような気もする。たとえば、ピンホールカメラというのは大判のモノクロ写真であることが多い。あるいは周辺光量が落ちて画面の隅が暗くなっていたりする。近景から遠景までピントの合うパンフォーカス。被写体をブラした見慣れぬイメージ。三脚を使ってじっくり撮ることにより生まれる静かなイメージ。

こういった付加価値のおかげでピンホールらしさが形成されているが、デジタルカメラを使って光学的な部分だけを抽出してしまうと、意外と面白みがない。色だってかなりまともだ。レンズの収差に見られるような破綻がなく、ちょっと物足りないのだ。

ということで、唐突ですがピンホールから撤退させていただきます。つまらない男にちょっかいを出され、「意外と面白みがない」とか言われて、納得がいかないかもしれないけど、私の求めているものではなかった。

でも、ピンホールをやってみて良かったよ。何か写真の原点に触れたような気がする。ピンホールよ、ありがとう。そして、さようなら。君のことは忘れない。

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